働き方改革への対応について
2019年4月1日から、その第一弾が開始された働き方改革
これから改正法が順次施行されていくなか、中小企業も対応をする必要がございますので、「残業時間の上限の規制」、「年5日間の年次有給休暇付与の義務化」、「正規・非正規労働者間の均等格差是正」などの法改正の概略についてご説明させていただきます。
解説に入る前に、中小企業は「働き方改革」について、どのように捉えたらよいかということについて、触れさせていただきます。
現在、中小企業が抱える重要な課題に「人手不足」があります。人手不足倒産という言葉も使われるようになり、経営者の方の危機感は日増しに高まっております。
このような状況に置かれている中小企業の視点で「働き方改革」への対応を考えると違った見え方をするのではないでしょうか。
働き方改革という流れの中で、これにしっかりと対応していったのであれば、結果として職場が魅力のあるものになり、後から今回の法改正はよいきっかけになったと考えることができるのではないかと思います。
社会の変化に順応して、人材の確保をできる企業には生き残りのチャンスがあるというような前向きな発想で対応していくべきだと思います。
今回の各働き方改革関連法への対応は全体のチェック体制と合わせて考えていくと対応しやすい場合もございます。当事務所では相談を受け付けておりますので、お困りの会社様はご相談ください。
各働き方改革関連法の施行時期について中小企業と大企業で同時期に実施されるものと、大企業から先行して実施されるものがありますので、働き方改革法における中小企業の定義をご説明します。
中小企業の定義
①資本金の額または出資金の総額 小売業 5,000万円以下 サービス業 卸売業 1億円以下 それ以外 3億円以下 または
②常時使用する労働者数 小売業 50人以下 サービス業 100人以下 卸売業 それ以外 300人以下 ※個人事業主や医療法人など資本金や出資金の概念がない場合は、労働者数のみで判断することになります。
出典:「働き方改革関連法の主な内容と施行時期」
働き方改革関連法の中で、3つの項目について解説いたします。
(2019年4月1日施行)年5日間の年次有給休暇付与の義務化
使用者は10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、希望を踏まえて時季を指定して、年5日の付与する義務が発生します。
有給休暇の消化率が改善していない、職場環境にとっては頭の痛い問題かもしれません。
改善には有給休暇チェック体制の見直し、有給消化の計画的なしくみ整備が必要です。
まず、有給に関する用紙等(有給管理簿、有給申請書)の整備についてご確認ください。整備が不十分であれば整備いたします。使用者は今回の改訂で年次有給休暇管理簿の作成・保存を義務付けられました。
これまでのように、有給休暇の残日数の確認だけをしていた会社も多いのではないでしょうか。これでは年5日の取得義務を守っているかどうかは把握できません。付与日からの1年間で5日の消化義務にあたる有給を把握できるように年次有給休暇管理簿が必要です。
※年次有給休暇管理簿については、労働者名簿又は賃金台帳と合わせた書類にすることも可能です。全体のチェック体制と合わせて考えてもよいでしょう。
有給休暇の計画的付与は全社員の有給休暇を管理する方法として使いやすい方法です。前提として労使協定が必要ですが、夏休みやゴールデンウィークなど会社が定めた日に会社で計画的に取得をさせることも可能です。また、少数精鋭の社員の中でまるまる一日休むことが難しいという場合、半休制度を使えばうまくまわるケースも出てきます。
(2020年4月1日施行)残業時間の上限の規制
36協定の締結において設定できる残業時間に罰則付きの上限規制が設けられました。
時間外労働の上限については今までどおり(月45時間、年間360時間が原則)、今まで、特別条項付き36協定を締結により、上記の上限を超えた時間外労働時間を設定できた臨時的な特別な事情がある場合であっても年720時間という上限ができました。
また、年720時間以内であったとしても、残業時間について下記の上限規制が追加されることになります。
- 単月で月100時間未満とする(休日労働を含む)
- 数月平均残業時間を80時間以内とする(休日労働を含む)
- 原則で定められている月45時間を上回るのは年間で6回までとする
※上限規制には適用を猶予・除外する事業・業務があります。
中小企業の残業代の上限規制の適用は2020年4月ですが、こちらは時間の掛かる問題なので、早目に検討すべき問題だと思われます。
(2021年4月1日施行)正規・非正規労働者間の均等格差是正
正規雇用・非正規雇用労働者間の不合理な格差を是正するため、法整備とガイドラインの整備の実施がされます。
今回の見直しの目的が同じ企業内で不合理な正社員と非正規社員の間の待遇格差をなくし、どんな雇用形態を選んでも、その待遇に納得して働き続けられるようにすることです。基本給・賞与などについて不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
具体的には不合理な待遇差別をなくすための規定の整備と差別的取扱いの禁止(均等待遇)が新たな制度として導入され、非正規社員が正社員との間に待遇差があると判断されれば、労働者の待遇に関する事業主の説明が義務化されます。
派遣労働者に対しては派遣先の労働者との間の均等・均衡待遇及び一定の要件を満たした労使協定に基づく待遇が義務化されます。
その他改正内容
- 中小企業の月60時間超の残業の割増賃金率の引上げ(中小企業2023年4月1日施行)
- フレックスタイム制の拡充(2019年4月1日施行)
- 高度プロフェッショナル制度を創設(2019年4月1日施行)
- 産業医・産業保健機能の強化(2019年4月1日施行)
※本文中の施行予定日時は中小企業の施行時期
参考資料
厚生労働省HP
「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて」