就業規則

就業規則とは

就業規則とは、会社独自のルールブックです。労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについて定めています。
常時10人以上の従業員が働いている職場では、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。これを違反した場合には、30万円以下の罰金となります。ここでいう従業員とは、アルバイトやパートも含みます。一方、派遣会社と雇用関係にある派遣社員や、労働者ではない役員は、従業員に含まれません。

就業規則は事務所単位

就業規則の作成や届け出は事務所単位で必要です。つまり、会社単位ではありません。会社全体で社員が何百人いても、支社や支店の従業員が10人未満の場合には、就業規則を作成し、届け出る義務はありません。
しかし、就業規則は職場の秩序を保ち、組織をしっかりと固めるものです。10人未満の事務所であっても、就業規則の作成は必要でしょう。

就業規則の効力

労働基準法第92条により、就業規則は法令や労働協約に反してはなりません。
労働基準法第93条と労働契約法第12条により、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となります。

就業規則の記載事項

就業規則には、必ず記載しなければならないもの、その定めがあれば記載しなければならないもの、記載しなくていいものの、3つがあります。

必ず記載しなければならないもの

就業規則には、次の事項について必ず記載しなければなりません。

  • 始業と終業の時刻、休憩時間、休日、休暇に関する事項
    交代制の場合には就業時転換に関する事項も
  • 賃金に関する事項
    臨時の賃金などを除く賃金
    賃金の決定、計算、支払いの方法
    賃金の締め日および支払いの時期
    昇進
  • 退職に関する事項
    解雇の事由を含む

その定めがあれば記載しなければならないもの

事務所に次の事項についてのルールがあれば、就業規則にも記載しなければなりません。

  • 退職手当に関する事項
  • 臨時の賃金・賞与・最低賃金額に関する事項
  • 食費・作業用品などを負担させる場合に関する事項
  • 安全・衛生関連に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償・業務外の傷病補助に関する事項
  • 表彰・制裁に関する事項
  • そのほか全労働者に適用される事項

記載しなくていいものの

  • 採用手続きや採用時の提出書類
  • 就業規則を作成する目的や用語の解説

就業規則の手続き

常時10人以上の従業員が働いている職場は、就業規則を作成しなければなりません。その後、該当事務所に従業員の過半数が組織する労働組合がある場合は労働組合、過半数が組織する労働組合がない場合は従業員の過半数を代表する人から、意見書を作成してもいます。
この意見を記載した書面を、就業規則届出書と就業規則に添付して、労働基準監督署に届け出ます(労働基準法第89条と90条)。

就業規則を周知させる

就業規則の有効にするには、従業員に周知させなければなりません。具体的には、就業規則を各作業場の見やすい場所に掲示、備え付けします。さらに書面を交付するなどして、労働者に周知しなければなりません(労働基準法第106条)。

10人未満でも就業規則が必要な理由

10人未満の事務所であっても、就業規則の作成は必要です。就業規則による会社のルールがないということは、トラブルへの対処ができないことを意味します。たとえば、次のようなことが考えられます。

突然の退職

民法627条1項では、従業員は退職を申し出て2週間後には会社を辞めることができます。ですが、仕事の引き継ぎには「せめて2ヶ月が必要」という会社もあるでしょう。就業規則では、退職についての取り決めることができます。しかし就業規則がなければ、自動的に民法の2週間が優先されてしまうのです。

懲戒免職

就業規則がない場合、従業員に業務上の怠慢などがあったとしても、会社は懲戒免職できません。就業規則なしで懲戒解雇を行った場合、不当解雇として従業員に訴えられるかもしれません。

雇用関係助成金

雇用関係助成金とは、厚生労働省による公的な給付金です。条件を満たせば、会社は助成金を申請し受け取ることができます。その条件には、就業規則の作成と備え付けが含まれていることもあります。

厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金

計画的付与制度

たとえば、会社には、従業員に対して勤続年数に見合った有給休暇を付与する義務があります。しかし中小企業では従業員が自由に有給休暇を取得したのでは、業務に支障が出ることもあるでしょう。そこで会社には、「年次有給休暇における計画的付与」が認められています。これは、有給休暇のうち5日を除いた分を計画的に会社が付与できるというものです。ですが、就業規則に明示しなければ、計画的付与制度を導入することはできません。

この記事は、2018年12月に執筆されました。記事中の情報は、現時点のものです。