控除について
総支給額から控除される項目
基本給に各種手当を含んだ金額を、「総支給額」といいます。総支給額には基本給や月給に含まれていない残業手当も含まれます。
総支給額が決まったら、次に手取り金額を計算することになります。給与の支払いは、全額払いが原則です。このため給与から控除されるものはないはずなのですが、2つの例外があります。それは、「法定控除」と「労使協定に特別に定められた控除」です。
法定控除
法定控除とは、法律により認められている、あるいは義務とされている控除です。次のものがあります。
社会保険料
社会保険料とは、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料のことをいいます。社会保険料はあらかじめ決められた標準報酬月額に基づいて計算されます。給与の見直しがない限りは、1年間の定額となります。
介護保険料を払わなければならないのは40歳以上の従業員に限られます。厚生年金保険には、老齢年金・障害年金・遺族年金などがあります。
雇用保険
労働者が失業したときに失業給付を行う制度です。約半分は、会社が支払います。従業員が控除される額は、毎月の給与に一定の率を乗じて計算したものとなります。支給額により毎月変動します。
源泉所得税
所得にかかる税金のことで、会社が従業員の代わりにまとめて支払います。従業員が控除される額は、毎月の給与に対して源泉徴収税額表により求めます。支給額により毎月変動します。
住民税
前年の所得をベースに課税されます。毎年の調整後の所得に対して10パーセントの年税率を12分割した金額となります。1年間、毎月定額となります。
労使協定に特別に定められた控除
労使協定に定めることにより認められる、給与からの控除です。次のものがあります。
社宅家賃・寮費
会社が従業員に用意した社宅や寮の家賃です。
財形貯蓄預金
会社が従業員の給与から控除し、貯蓄します。利息は非課税となります。
生命保険料
団体定期保険などに加入した場合の保険料です。団体定期保険とは、会社が契約者となり従業員が加入する定期保険のことです。
労働組合費
労働組合がある場合、その組合費です。
その他
親睦会費、旅行の積立金、社内預金、買付金などが労使協定によって控除されます。
労使協定とは
原則として会社は、社会保険料や税金などのように法律に定められている法定控除でなければ、給与から天引きすることはできません。労働基準法に定められている給与支払いの5原則のひとつ「全額払いの原則」に反するからです。
このため、給与を全額支払った後に、社宅家賃や寮費、生命保険料などをあらためて徴収することになります。しかし労働基準法第24条第1項に基づき、従業員の代表と会社の間で労使協定を結んだ場合には、法廷控除以外についても給与から控除することができるのです。
ここで結ばれる労使協定は一般的に「賃金の控除に関する協定書」と呼ばれるもので、必要事項を書面に記載し、会社側と従業員側の代表者がそれぞれ記名、捺印することで協定が結ばれたことになります。労働基準監督署などへの届け出は必要ありません。
源泉所得説と住民税の納付方法
従業員や役員の給与から源泉徴収した所得税は、給与を支払った月の翌月10日までに源泉所得税の「納付書」によって納付します。納付期限が土日や休日になる場合は、納付期限が休み明けに延長されます。納付が遅れた場合は、不納付加算税や延滞料などが課されることになります。
特例により給与の支給人数が常時10人未満の会社では、源泉所得税の納付を半年に1回にすることができます。
住民税は、従業員が居住している市区町村に納付します。納付方法には、「普通徴収」と「特別徴収」があります。普通徴収は事業の経営者で、確定申告をしている人などが納付する方法です。6月末、8月末、10月末、翌年1月末の4回に分けて納付します。金額は各回均等が基本ですが、初回は端数を多く支払います。
特別徴収は、会社などに勤務している人の納付方法です。会社は従業員の毎月の給与から徴収した住民税を、その翌月の10日までに各市区町村に納付します。