日本と世界の労働時間
日本の法律で定められた労働時間は「1週間40時間」
日本での労働時間は、労働基準法により「1週間40時間」、「1日8時間」と決まっています(労働基準法第32条)。
一定の条件を満たした場合には、1ヶ月を平均して1週40時間に、1年の労働時間を平均して1週40時間にすることができます。いずれにしても、この40時間を超える労働は「法定時間外労働」、つまり残業となります。
会社が時間外労働や休日労働をさせようとする場合は、労働組合と「36協定」を結んでおく必要があります。もしこの36協定を労働基準監督署に届け出ることなく従業員に時間外労働をさせた場合は、労働基準法違反となります。この36協定は、労働者がたった1人でも届け出が必要となります。
会社が労働者に時間外労働や休日労働をさせた場合は、労働者に割増賃金を支払うことになります。時間外労働の割増率は2割5分以上、休日労働の場合は3割5分以上となっています。
海外での労働時間と時間外労働のルール
それでは、世界各国の労働時間のルールを見てみましょう。
EUの労働時間
EUでは、週労働時間の上限は48時間と決まっています。
ただしこれは、時間外労働を含めた時間となります。
米国の労働時間と時間外労働
米国の労働時間も、1週間40時間です。
時間外労働では、賃金の割増率は5割となります。時間外労働の時間の上限は規定されていません。
中国の労働時間と時間外労働
中国の労働時間は日本と同じで、1週間40時間、1日8時間と決まっています。
時間外労働は原則として1日1時間までで、賃金の割増率は5割です。ただし特別の事情がある場合でも、1日3時間、1ヶ月36時間を超える時間外動労はできません。
韓国の労働時間と時間外労働
韓国の労働時間も、1週間40時間、1日8時間です。
時間外労働では、賃金の割増率は5割となります。この時間外労働の時間の上限は、1週間に12時間と定められています。
業種別の実労働時間と所定外労働時間
日本の業種別実労働時間
今度は、日本での業種別の実際の労働時間を見てみましょう。
厚生労働省の調査(事業所規模5人以上、平成29年6月確報)によると、2017年6月の1ヶ月間でもっとも総実労働時間が長かったのは、建設業の「179.9時間」でした。
次いで、運輸業・郵便業の「175.8時間」です。
さらに、製造業の「170.9時間」、鉱業・採石業等の「170.5時間」と続きます。
日本の所定外労働時間
次に、厚生労働省の毎月勤労統計調査(平成29年6月分結果確報)から、業種別の「所定外労働時間」に注目してみましょう。この所定外労働時間とは、就業規則で定めた労働時間の超過分の労働時間のことをいいます(もちろん、就業規則は法定労働時間の範囲内で定めなければなりません)。
この所定外労働時間でもっとも長かったのは、運輸業・郵便業の「23.3時間」でした。
次いで製造業の「15.8時間」です。
総実労働時間が長かった建設業の所定外労働時間は、「13.7時間」でした。
この5年間での業種別の総実労働時間や所定外労働時間に、大きな変化はありません。
厚生労働省の調査によると、このデータの4年前、平成25年(2012年)6月の1ヶ月間では、建設業の総実労働時間は176.0時間。運輸業・郵便業は174.3時間。製造業は168.0時間でした。運輸業・郵便の所定外労働時間は22.1時間、製造業は14.7時間でした。
各国の労働時間
OECD(経済協力開発機構)の調査から、各国の労働時間を比較して見てみましょう。
日本と各国の労働時間
2015年1年間の日本の労働者の労働時間は「1719時間」でした。米国のほうが労働時間は長く、「1786時間」です。
労働時間の長さ第1位は、メキシコで、「2248時間」です。
第2位は、コスタリカの「2157時間」。
第3位は、韓国の「2113時間」でした。
EU各国の労働時間
1週の労働時間の上限が48時間と決まっているEUでは、ドイツが「1368時間」とその労働時間の短さが顕著に表れています。
そのほかEUのフランスは「1482時間」、英国は「1674時間」、スペインは「1701時間」でした。
中国の労働時間
中国はOECD加盟国ではありませんので調査対象外ですが、2015年10月のロイターによると、中国人労働者の勤務時間は「2000~2200時間」に及ぶそうです。
出稼ぎ労働者の農民工の場合、2013年時点の1日当たり労働時間は平均8.8時間。全体の85%は毎週44時間以上働いています。
労働時間とGDPの関係
労働時間が長くなれば、その国の生産力が上がり、国民や労働者は豊かになるのでしょうか? そこで、OECDが集計した2015年の世界のGDP(国内総生産)を見てみましょう(出典 総務省統計局「世界の統計2017」)。なお日本円は2015年のレートで独自に換算した概算です(1ドル=109円で計算)。
GDPの第1位は、米国の18兆ドル(18,036,648百万ドル)で約1966兆円でした。
2位は、中国の11,158,457百万ドルで約1216兆円でした。
そして3位は、日本の4,383,584百万ドルで約478兆円でした。
4位は、ドイツの3,363,600百万ドルで約367兆円)。
次いで、イギリス、フランス、インド、イタリア、ブラジル、カナダ、韓国、ロシアと続きます。
GDPと労働時間を見ると、GDPが4位(約367兆円)のドイツは、2015年の1年間の労働時間は1368時間と短さが顕著だった一方で、韓国の労働時間は2113時間で、GDPは11位で約150兆円(1,377,873百万ドル)でした。
もちろん、各国の産業構造の違いなどもありますが、国民の労働時間の長さと国内総生産は単純に比例するものではないことを表しています。